エコキュートの利点と欠点
もくじ
エコキュートとはヒートポンプを利用した給湯器のことです。「キュート」と「給湯」をかけてるんですね。
ちなみに実は関西電力の登録商標です。
ウリは、「光熱費」が安くなることと「エコ」(環境的な意味で)である、ということですが、
その実際のところを見ていきましょう。
なぜ光熱費が安くなるのか
日本という閉じた社会の中で考えると、昼間はみんな昼間で、夜間はみんな夜間です。
単純に電力需要は昼間の方が多いのはご存知の通りです。
みんな基本的に昼に活動しますし、夜は寝ます。特に昼間は工場などの電力需要が大きいのです。
会社は夜間に稼働し従業員を働かせると、労働基準法により深夜割増手当を出さないといけない決まりになっています。
夜よりは昼に営業するというのは慣習の他こういう法律的な理由もあります。
電気を作る作業、つまり発電には電力会社が様々な形でタービンを回しているのですが
需給の変動に合わせてこのタービンをたくさん回したり、止めたりするのは難しい作業であるということは想像に難くないでしょう。
例えば風力発電を考えてみると風の力でタービンのようなものを回すのですが、夜は電力の需要が小さいからといって
風が止んでくれるわけではありませんし、昼に需要が大きくなるからといって風が強く吹いてくれるわけではありません。
ご存知のように特に原子力を利用した発電は昼夜問わず発電し続けた方が、効率が良く無駄がないのです。
火力発電も同様です。火力発電は火を発生させ、お湯を沸かしてその蒸気でタービンを回しますが
需給に応じてこのタービンの回転具合の調整は難しいのです。
電力が不足する、ということはありえないこととされているので、
多めに発電し捨てられる電気も多いのです。
電力会社は、電力を需要に応じて安定的に提供することが求められています。
なのでこの昼間の需要が大きく、夜間の需要が小さいという需給の山をできるだけ無くしたいわけです。
そこで電力会社は夜間の電気料金を割り引くことにより、昼間に使用する電気を夜間にシフトさせようとしているのです。
単純に需要が小さいものは安く、需要が大きいものは高くなるという経済の原理ですね。
エコキュートは夜間・深夜の安い電気料金を利用する
エコキュートは夜間にゆっくりと時間をかけて水をお湯に変えます。
そしてそのお湯を魔法瓶的な仕組みで、保温するのです。
夜間の電気を使用するので、電気代が安くなり、光熱費が安くなるというわけなのです。
その作られたお湯はお風呂のみならず、床暖房などにも使用することも可能で総合的に光熱費削減に効果があるということなのです。
電力は貯められるのかという問題
昼夜問わずに一様に発電し続けた方が効率がいいんだったら、その需要が小さい時に余る電気をどこかに貯めておくことはできないのでしょうか?
端的にいうと現在の技術では不可能なのです。
不可能というと語弊がありますが、理論的には当然可能です。バッテリーというものが世の中にありますよね。
どの部分が不可能なのでしょうか。
そのバッテリーを想像してみましょう。一番身近なバッテリーはおそらくスマホに入っているバッテリーでしょう。
このバッテリー、スマホの筐体の大部分の容積を占めています。
単にスマホを少しの間稼働し続けるだけのためにこれだけの大きさがいるのです。
また、最近では2016年にsamsungの携帯の発火問題がニュースになりました。
一定以上の容量のバッテリーは飛行機には持ち込めません。危険物なのです。
大きな電力を保存しておくには、そのサイズに見合った恐ろしいほど大きなバッテリーが必要であり、
大きくなればなるほどその危険性は増します。
つまり、たくさんの家庭や工場の供給できるほどの電力を保存できるバッテリーを作り、安全に運用するのは現在の技術では非常に困難なのです。
電気は様々な形で利用されます。
エコキュートは、「電気」を必ず家庭で必要とされる「お湯」という形に変換し、その「お湯」そのものを各家庭に備え付けられた設備で保存するこの仕組みがエコキュートなのです。
電気そのものを保存するのは難しいですが、一旦お湯という形にすれば保存しやすいという理論に基づく商品なのです。
価格
エコキュート単体で工事費込で 45万円〜80万円ほど
オール電化込みで工事費込で 60万円〜100万円ほど
です
ネットでは20万円弱などで商品がありますが、大抵は工事費別ですので注意しましょう。
エコキュートの商品はほぼ大手メーカーのものしかありません。
よくわからない会社が出しているものを訪問販売などで、「エコキュートです」と言ってきたら注意しましょう。
●利点1 光熱費が安くなる
ほぼ全ての人が毎日お湯を利用します。お風呂入りますよね、みなさん。
従来であればガスなどを利用したボイラー式の給湯設備によりお湯を利用していましたが
この給湯に使用するエネルギーを「安い深夜電気」を変えるために、その分光熱費が安くなるのです。
さらに、太陽光発電と組み合わせれば電気は自前でまかなうこともできるためにさらに光熱費が下がります。
●利点2 環境に優しい・安全である
エコキュートはヒートポンプという仕組みを利用したものです。
ヒートポンプは「冷媒」を使用します。
冷媒を圧縮したり、膨張したりすることで熱を発生させているのです。
この冷媒にCO2(二酸化炭素)を利用することが環境に優しいのです。
かつては冷蔵庫やエアコンなどの冷媒として地球に有害という面で名高い「フロン」が使用されていましたが、
CO2は自然冷媒であり、人体にも有害ではないために安全で二重の意味で環境に優しいと言えるでしょう。
×欠点1 お湯が足りなくなる
ボイラー式の給湯器が需要に応じてお湯を提供する「オンデマンド式」だとすると、エコキュートを利用した給湯器は「貯蓄型」です。
使用するその瞬間までの夜間に「お湯」が作られている必要があります。
タンク内に「お湯」が貯められていなければならないのです。
さらにエコキュートを利用しての使用できるお湯はそのタンク内に貯められた量が上限なのです。
人間の活動は当然一定ではないですよね。お友達が泊まりに来てお風呂に入ったり、子供が泥んこになって帰って来たり、孫が遊びに来たり。
設備導入時には想像の範囲でエコキュートの容量を含めた性能を決めますが生涯その通りにいくはずなんてことはまずありません。
お湯が足りなくなる時が度々あることでしょう。
×欠点2 エネルギーの効率の問題
「オンデマンド式」であるボイラー式給湯器は使用したエネルギーにより変えられたその「お湯」は沸かしたその場から使用、消費されますよね。
これは「お湯」が冷めないことを意味します。冷める瞬間がありません。
一方、エコキュートで沸かしたお湯は魔法瓶的な仕組みで「保温」しています。
そして、必要な時に使用されます。
この「待機状態」の時にお湯はどんどん冷めていきます。
魔法瓶で熱いお茶を持ち歩いたことがあると思います。
朝一番にお茶を入れても夕方にも熱々だったことってありますか?
ありませんよね。
冷めたお湯はまた沸かさなければならず、それは果たして「省エネ」と言えるのかどうか、ということですね。
×欠点3 見えないコストと寿命
省エネ住宅に関してはエコキュートの導入前提のハウスメーカーも多いです。
特に経済的な面からアピールするような省エネ住宅においては光熱費削減による住宅のランニングコストの削減がウリになっている場合が数多く見られます。
エコキュートは「メンテナンスが必要な住宅設備」に数えられていないことも多いのです。
導入時には 「xx万円かかります。」とはいうのですが、
そのメンテナンスについては家電と同様に「壊れたら修理・もしくは新調」とだけいうのみです。
エコキュートは比較的新しい商品のために、何十年も壊れずに使用できている、という実例は当然ありませんが
特にヒートポンプは5年から10年程度で故障することが多いというデータがあります。
さらにいうとヒートポンプというものは技術の塊であるために、その大きな仕組みもそうですが
効率などの部分をとって見ても日々、よりいいものが開発されていくために動けばいい、というものでもありません。
身近なヒートポンプを使用した製品であるエアコンを考えて見ましょう。
果たして10年前の製品が現役でバリバリ現行商品と遜色なく動くか、というとそれは難しいことだということがわかります。
少なくとも5年〜10年程度でヒートポンプの交換、10年くらいでタンク及びそのユニット周辺の交換をするという計画は立てておかなければなりません。
×欠点4 近隣住宅への影響
長く言われてる健康被害に関してです。
深夜にコンプレッサー(圧縮機)を利用することに起因して低周波の騒音が様々な被害を及ぼすと言われています。
深夜は基本的に世の中は静かなので、この低周波が目立つというか耳立つというか、ということですね。
この低周波は基本的に人間の可聴域には入らないので音としては聞こえないのですが、実際には何らかの影響を及ぼすことが確認されています。
事実、2014年にヒートポンプを利用した給湯器が原因で健康被害が生じたことの可能性が公的に認定されました。
実際に健康被害を及ぼすかどうかはともかく、
設置した当人は、何らかの健康被害があろうとも自分自身の話なので構わないとしても
近所から「エコキュート」のせいで夜眠れない、朝調子が悪い、と認定されるのが怖いのです。
急に夜眠れなくなる人、寝覚めが悪くなるなんて人、いくらでもいます。
ちょっとしたトラブルがきっかけで、ちょっとした妬みがきっかけでそういうことを訴えられたり、影で言われることが怖いのです。
これは、エコキュートを導入する際にどこかで導入事例があるかどうかなどを近所に軽くヒアリングすることが望ましいですね。
△欠点5 将来性
エコキュートは、大きな特徴として「光熱費の削減」が挙げられます。
前述のように光熱費が削減できる理由は「深夜の電気料金が安い」からです。
エコキュートという商品が登場した当時は原発がバリバリ稼働していました。
原子力はクリーンなエネルギーで安定したエネルギーとして見られていた当時です。
特に原子力は大きなエネルギーを安定して稼働させることができることが一つの利点でありますから、
昼間と夜間の電力の需要の差による捨てられるエネルギーがもったいなかったのです。
その当時の世間の需要と電力会社の思惑により当時の深夜の電気料金が決められました。
特にインフラであるエネルギーの料金は急激に大きく変動させることは難しいために現在もその当時の料金を引きずっています。
適正価格かどうかは誰にもわかりませんが、
電気料金単価は徐々に増加の傾向は見て取れます。
ほぼ全ての原発が止められている現在、その設備の維持管理の費用及び実質的な資産価値がほぼゼロとも言えるものと帳簿上の資産との差額を
埋めるために電力会社各社は相当な努力を求められています。
営業努力はつまり最終的に売値にはね返ります。
この状況が続く限りは、電気料金の度々の改定のみならず深夜電気料金の割引の見直しにも繋がりかねません。
特にガスがもっとも得意であるはずの「湯を沸かす」ということを、エコキュートを使用して電気に変えてしまうということから考えると、
エコキュート採用の家庭はIHなども含めた「オール電化」住宅であることが多いというのが事実です。
「電気に頼る」ことと「原子力に頼る」ことがほぼイコールであった前提が崩れ去ってしまった今、
また新たな「電気に頼る」と同義の手段が出てこない限りは電気だけでない、複数のエネルギーに頼った方がセーフティであると言えるでしょう。
おまけ 訪問販売が多い理由
買いやすく、手間と比較して儲けを出しやすいという、扱いやすい価格帯の商品であることと、
導入後のメリットの説明が簡単だということが挙げられます。
目に見えて光熱費が安くなりますから。
理由も明確です。ガスを使う代わりに、深夜の電気料金を使用する、というからです。
導入時には、初期設備費と工事費のみで、毎月の光熱費削減ができるので
不満が出やすい故障時の修理コストは数年後に現れるために
訪問販売につきもののクーリングオフのことをあまり考えなくていいのです。
エコキュートに限らず、突然の訪問販売で契約してしまうというのはあまり感心しませんね。
皆様におかれましてはどのようなものであっても、ほしいものは自分で買いに行く、という基本的な態度は常にとりつづけましょう。